「サカナとヤクザ」というノンフィクション系のルポ本を読んだ。作者が実際に漁業関係者・・というか密猟者などにインタービューしたり、市場でアルバイトした体験記のような本である。なかなか興味深い内容だったのでご紹介したい。
1.本の情報
(1) タイトル:サカナとヤクザ ~暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う~
(2) 作者: 鈴木智彦
(3) 出版社:小学館
(4) 価格:1728円
2.概要
この本は、漁業と反社会勢力の関りを実録した本である。まずはナマコ、アワビ等の密漁現場から話は始まる。そこから築地市場(元:豊洲市場)へ潜入(アルバイト)することで、密漁された魚介類が堂々と一番に流れ着く様を追う。そこから話は転じて北海道というか北方領土周辺のロシアとの漁業権めぐる漁師、警察、公安、反社会勢力入り乱れたやりとりの振り返りがある。そして、閉めには九州などを中心としたウナギの稚魚の密漁を実録している。ページ数はそう多くないが、話は重厚な内容となっている。
3.感想
この本を読むとまず反社会勢力と漁業の関係の深さを感じずにはいられない。この本自体は、最近多いナマコの密漁を取っ掛かりに話が始まり、現在の話題が多い。しかし、途中では過去に話が及ぶ。例えば千葉県銚子漁港の戦後混乱期の警察ヤクザの関係である。もめ事をヤクザが調停してことなくを得たそうである。今じゃ考えられない話だ。更には北海道における北方領土周辺の漁業として、ソ連と日本のダブルスパイを行ったり、御朱印船などと呼ばれる認められた密漁(?)をする漁師に話が転じる。現在は過去の蓄積だと思っているが、やはり過去の蓄積の結果が現状の密漁問題や現在でも反社会勢力とのつながりが深いところに関係するのかもしれない。
どうも昨今は、中国でナマコが人気らしく、ナマコを密漁する暴力団が多いらしい。個人的にはナマコの密漁で生計を立てるなら、堂々と漁師になれば良いと思ってしまうが、そうでもないみたいだ。各々逮捕されないためにいろいろな策をねり、当局は必死にそれをおう様は文字どおりイタチごっこである。この本を読んで思うのは、密漁に対する刑罰が軽いのが密漁しやすくなる原因であると感じた。罰金を払うより密漁に稼ぐ額が高かったり、密漁して接収された道具を密漁業者が買い戻すなんてこともあるらしい。ほかの刑罰のバランスもあるが、もう少し厳しい罰則で良いと感じた。
この本で読んで感じたのがもう一つ漁業は農業と同じ第一次産業であるが、養殖を除けば自然にいる海産物を取得してくる。この辺りを考えると漁業権と表して密漁と指摘する側も少し不思議な気がしてしまう。畑ではないのだから、そもそもは誰のものでもないのである。それなのに漁業権とは何ぞや?という気もしてしまう。地域の産業や各家庭の生計、自然保護塔の観点もあるがなんか不思議な感じしてしまった。
了